ナッジ理論が都市にもたらす可能性

カテゴリー:まちなみ
投稿日:2022.2.21

最近見聞きしたことちょっと書いてみました。それは、「ナッジ理論」による「寄り道」推奨で、公共交通の混雑緩和と経済振興の両立を図る取り組みというもの。
20年ほど前、オランダ・アムステルダムのスキポール空港に到着し、トイレに行くと2つのことで驚いた。一つは男子小トイレに届かず諦めて大に入ったことと、もう一つは小トイレにハエのイラストが中心を微妙に外して貼ってあったこと。今では時々見るようになったが、それが「ナッジ理論」を応用したものだったらしい。
ところで福岡では、その行動経済学の「ナッジ理論(肘で軽く突くの意)」を用い、人々に自然な行動変容を促すことで、コロナで減った公共交通機関と店舗利用喚起を目的にした「安心快適なおでかけサポート実証実験」が、日立と西日本鉄道のコラボでおこなわれている。
その特徴は、スマホによる移動経路検索で、公共交通機関の混雑をタイムリーに知ることができ、加えてその人の好みに合わせた「寄り道」が提案されるサービスである。それにより、利用者自らの判断による移動予定の変更をきっかけとした混雑の緩和と、「寄り道」に設定した店舗の集客を両立させようというもの。
実際に電車・バスが混雑しそうな時間に使ってみると、天候も考慮された代替経路候補が提示される。すごいのは、予め登録した自分の嗜好・特性に基づきセレクトされた「寄り道」としての飲食店・店舗が混雑状況を前提に紹介される。結果、ユーザーは個人の興味を満たしながら、混雑回避の交通ルートを考慮することができる。
この取り組みは、大勢の都市利用者に対し、移動時過密の平準化による「安心」と、快適な店舗利用促進による「経済のあと押し」という2つの課題解決を、利用者自らの判断に委ねながら成立させるユニークな施策と言える。
これから様々な技術が開発される中、個々に行動の判断材料を与え、コロナ禍で人の集中を苦手とする都市の生態系を整える試みが、今後の都市生活に貢献できる結果が出ることを期待している。
我々、企業家も、異分野の知見や新技術を、日々積極的に取り込む意識を持つことで、理想的な経営に向けた発明ができることを示唆しており、今回の結果から目が離せない。

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吉原住宅 代表プロフィール
吉原住宅有限会社
代表取締役

吉原勝己

1961年福岡市生まれ。1984年九州大学理学部卒業後、旭化成で医薬品の臨床研究を17年行う。その後吉原住宅に入社。
老朽ビルの再生が、資産価値向上と人のつながりを深める手段となることを確認する。